アイスランドのオーロラ
 
 意外と楽なオーロラ観察


 
アイスランドへ初めて行ってみました。北海道より少し広い島ですが、グリーンランドとスカンジナビア半島の間にある火山島で、島全体が溶岩で覆われています。溶岩や火山灰を整備して、牧草地にしている所がかなりありますが、日本流の農業はほぼ不可能です。

 オーロラを見るのを主眼に北欧へ出掛けて今年で三年目です。九月末から十月がいいように思っています。オーロラ見物というと、マイナス20度、30度、時にはそれ以上の寒気の中で、凍えるような思いをして見るもののように“擦り込まれ”ていましたが、1973年の夏にノルドキャップへ行ったとき、真昼の空に薄いけれど壮大なオーロラが出た記憶があり、調べてみたら白夜が終わり、九月の半ば頃から綺麗なオーロラが見られるということを知りました。

 そこで出掛けたのがフィンランド。樹林の中のコテージで素晴らしいものが出ました。昨年はノルウェーのベルゲンから、フィヨルドを巡りながら極北のロシア国境の町まで航行する貨客船で素晴らしいオーロラが見られました。そこで今年は、オーロラベルトの下に、全島が入るアイスランドへと出掛けました。

 ノルウェーの船から見たものが、珍しいほど強いオーロラだったと地元の人がいっているほどなので、幾分は見劣りはしましたが、それなりに綺麗なものが天空を彩りました。気温はマイナス四度を下る事がなく、日本の冬とそう変わりません。車で眺望のいいところへ走り、オーロラの出現を待つのでした。

 
 便利なオーロラ予報


 アイスランドでは毎日、オーロラ予報が見られます。天気予報と連動していて、なかなか便利です。もっとも的中率は必ずしもいいとは言えませんが、レンタカーで旅する人には是非ものでしょう。特に天気予報には風力なども記載されていて、道路状況も分かるようになっています。冬になると道路閉鎖や強風の危険があるため、レンタカーでの走行は十分に注意したいところです。

 オーロラ予報は en.vedur.is/forecasts/aurora で見られます。このページには、左のタブで選ぶと天気予報なども入っていて、滞在中は便利に使いました。オーロラの予報は雲の様子が全島に渡って見られ、どの地域が可能性が高いかが分かります。また、図の右側には数字の1から8まで、オーロラの強さが予報されます。宇宙が相手ですから、確率はそう高くはありませんが、晴れれば大概、見る事が出来ると思います。今回の旅では、弱い、と表示されていても、見事なものが出現したケースもあります。


 
 北斗七星、アイスランドホースとともに
  夜の牧場で寒風の中、アイスランドホースが佇んでいました。人なつっこく、近づくと柵の側まで寄ってきました。空には北斗七星が輝き、オーロラが天空を舞います。太めの線となって北の空、東西に広がるかと思うと、縦の線が走り、大きく広がっていきます。
 牧場の馬はちょっとボケていますが、ストロボを焚くような特殊な撮影はしないので、ここでのカメラ設定は、おおよそ次のようになります。
 ▼絞り 2.8
 ▼ISO 1600
 ▼露出 4秒
 
 ISOを800にして、8秒露出でも似たような結果でした。カメラは専門外なので、適当にやってみています。
 


 オーロラベルト

 オーロラベルトとは一部の円を切り取ったように、東西に延びるオーロラの光りのように思います。いつも虹の角度を緩くしたように、北斗七星と北極星を頼りに、こちらが北だな、と思う方向に目を向けると、始めは薄らと、次第に濃くなることが多いのです。
 この帯は地平線から地平線へと延びています。雲に遮られない限り、緩い円形の一部に見えます。このベルトは東寄りだけのこともありますが、これがモヤモヤとしてくると、壮大なオーロラに広がる可能性が強いのです

 もちろん、オーロラベルトを示す光りの輪、と決めつけるわけではありません。しかし、北欧、アラスカ、カナダ、もちろんアイスランドもオーロラベルトの下にあります。地域的に外れる所もありますが、おおよそ、北緯60度から70度の範囲がもっともオーロラの出やすい緯度になります。南半球ではこのベルト地帯が、南極大陸や海であるため、一般の旅行者がオーロラを見るには適していません。
 また、オーロラの出現するのは、高度80㌔から500㌔とされる電離層。光り自体はそれほど強くないので、星が透けて見えます。


 
 様々なオーロラ
 
オーロラの姿は刻々と変わります。写真を撮ろうと、マニュアルのセットに夢中になっていると、折角のオーロラは姿を変えています。写真を撮るか、脳裏に焼き付けるのを取るか。その人の自由ですが、一押しでマニュアルのセットが変えられる仕組みがあると、オーロラ撮影は素人でも楽しく出来そうです。もっとも、プロが状況に応じてセットしたものを仕組んでもいいのでしょうが、光度はその都度異なり、やはりカンを頼りに、次々とISO、露出、シャッター速度などを替えていくのがいいのでしょう。

 以前、ル・マン24時間レースで、プロのカメラマンが、暗い中で車やドライバーを鮮やかに映し出しながら、背景のスタンドもきちんと写していたのには感心しました。マニュアル開放状態のシャッターでそれなりの露出を決め、車がやって来たその瞬間に、ストロボを一発当てるのです。ストロボの光りは瞬間を捕らえます。ドライバー、車の姿は焼き付けられ、長時間露出のスタンドを背景に見事な一枚が出来上がるのでした。

 前に掲載した馬とオーロラと北斗七星も、次にチャンスがあればストロボを持って行こうかとも思いますが、高級カメラを買うほどマニアではないし、もう少し馬に近づき、ストロボを当てて見ると、ル・マン24時間の夜のように、アイスランドホースとオーロラ、北斗七星が綺麗に映るのかなー、などと考えています。やってみると簡単にはいかないでしょうが…。


 上の写真は天空に広がったものです。渦を巻く様に円形からさらに大きく広がって行きました。
 

 緩い渦を巻く

 遠くに民家の明かりが見えます。その後ろには低い山が連なっていました。その山の奥から、流れ出すように緑のラインが緩やかなカーブを描いて広がってきました。

 山の上に少し雲がかかっています。黒く映っています。星の光は雲を通しません。薄いオーロラが出た時、雲かどうか、判断に迷うことがありますが、星が透けて見えたら、ほぼ間違いなくオーロラです。 

 

 

 
     
 
 派手ではないけれど、まだ残照のもと、薄い色彩のオーロラが出る事もあります。今回の旅では、八時半過ぎから九時半似かけて出る事が多かったのですが、午前零時過ぎのこともありました。多くは日没後、約1~2時間後に出る事が多かったように思います。
 ガイドなし、宿もパソコンで予約するいつもの通りの全くの個人旅行なので、オーロラを見る場所も、適当に選ぶことになります。レンタカーに乗っているのは強みで、気軽に移動出来ます。


 この写真は派手なオーロラばかりが幅を利かせているような時に、フト心を和ませる柔らかなものでした。